2021年9月29日に最新型手術顕微鏡 Carl Zeiss KINEVO 900が納入されました。群馬県では1台目とのことです。KINEVOは手術顕微鏡としても世界最高峰の性能を有していますが、何よりもその特長は「外視鏡」として使用できることです。最大焦点距離が従来の500mm から 650mm となり、対物レンズを高い位置まで上げて、接眼レンズを覗くことなく4K 55インチのモニターで3Dゴーグルをかけて立体視しながら手術を行うのが外視鏡手術です。外視鏡専用機としては他にもありますが、顕微鏡と併用できる機種は世界でKINEVOだけです。数年前から脳外科の学会ではよく取り上げられており、「10年後には顕微鏡手術はなくなり、全て外視鏡手術になる」と言っている人もいました。

 皮膚切開の段階から接眼レンズ部分を手術台よりはるか上方に上げた状態で3d録画しながら肉眼(マクロ)モードで手術を開始し、その後、拡大して外視鏡モードで従来顕微鏡下に行っていた手術操作を行い、最も重要な部分の手術を行う時には慣れた顕微鏡モードで行うという3通りの使い方ができます。脊椎脊髄手術は脳手術に比べてそれほど術野が深くなく狭くなく、あまり強拡大を必要としない点で外視鏡手術に向いていると思われます。特に腰部脊柱管狭窄症に対する筋肉温存椎間除圧術(MILD手術)は術野も浅く、ほとんど顕微鏡モードを使用せず、外視鏡モードだけで手術できるようになっています。

 外視鏡手術の長所としては、接眼レンズの位置により術者が不自然な姿勢とならずに済むこと、3Dゴーグルをかければ手術室に居るスタッフが全員、大型3Dモニターにより術野を共有でき、特に教育面において有用であることが挙げられます。