生活習慣と認知症の関連性

 認知症についての研究が進むにつれて、生活習慣と認知症の関連性が明らかになりつつあります。

 世界的に有名な久山町研究があり、そこからの引用となります。

 また首相官邸の健康・医療戦略推進本部(第四回)議事次第に掲載されている資料7を見ますと、

  • 食習慣(和食+野菜+牛乳)
  • 定期的な運動習慣
  • 禁煙

 以上が、認知症の予防因子となっているようです。

 生活習慣の改善と同時に、早期発見・早期治療も認知症の進行を抑えるための重要な因子です。

食習慣(和食+野菜+牛乳)

 防御因子の検討では、認知症の予防につながる食事パターンについて検討した。これまでに認知症発症との関連が報告された栄養素と関連する食事パターンを縮小ランク回帰法により検討すると、大豆・大豆製品、緑黄色野菜、淡色野菜、藻類、牛乳・乳製品の摂取量が多く、米の摂取量が少ないという食事パターンが抽出された。この食事パターンには、果物・果物ジュース、芋類、魚の摂取量が多く、酒の摂取量が少ないという傾向も認められた。

 次にこの食事パターンをスコア化し、追跡調査において食事パターンスコアと認知症発症との関係を検討した結果、この食事パターンの傾向が強い群ほど全認知症の発症リスクは有意に低下した。この有意な傾向はVaDおよびAD発症でも観察された。

 減らすと良い食品となった米を単品で見ると、その摂取量と認知症発症との間に明らかな関連は認めなかった。一定の摂取カロリーの中で、米(ごはん)の摂取量を減らして予防効果がある他の食品(おかず)の量を増やす食事パターンがよいことを示しているといえる。

 増やすとよいとなった食品群と認知症発症の関係を検討すると、牛乳・乳製品のみが認知症発症と有意に関連しており、牛乳・乳製品の摂取量の増加に伴いVaDおよびADの発症リスクは有意に低下した。

 欧米の追跡研究でADの発症リスクを低下させるとして注目されている地中海式食事法では、牛乳・乳製品の摂取を軽度から中等度に抑えるよう推奨しているが、日本人の牛乳・乳製品の摂取量は未だに欧米人の半分以下と大きく下回っているため、日本人においては牛乳・乳製品の摂取が望ましいという結果になったものと考えられる。

九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野久山町研究室 久山町研究より引用

 引用文中のVaDとは「脳血管性認知症」、ADとは「アルツハイマー型認知症」の事です。

 大豆製品、野菜、藻類、牛乳・乳製品は、カルシウムを多く含む食品ですので、認知症と同時に骨粗鬆症の予防にもなります。

定期的な運動習慣

九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野久山町研究室 久山町研究The long-term association between physical activity and risk of dementia in the community: the Hisayama Study.より。

 定期的な運動習慣は日本人におけるアルツハイマー型認知症の予防に有効である、と明らかになりました。それと同時に、脳血管性認知症などの予防には効果がないとのことです。

 論文の「定期的な運動習慣」とは「余暇時間に週に少なくとも1回以上の運動」と定義されています。

 具体的な運動方法や実施時間については書かれてはいませんが、散歩などのウォーキング運動やサイクリング、リハビリなどの筋力トレーニングなどではないかと予想されますが、今後の研究結果が待たれます。

禁煙

 九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野久山町研究室 久山町研究からですが、非喫煙者と比べて、喫煙者の方が明らかに認知症発症リスクが高くなっています。

 また、喫煙者であっても禁煙を行えば認知症発症リスクが低くなることが明らかとなり、アルツハイマー型認知症、脳血管認知症の両方に予防効果があることがわかりました。