インプラント治療 より詳しく
人工物であるが故に、天然の歯には耐久力や耐用年数は天然の歯には敵いません
また人工物を植え込むため、合併症発生の可能性を100%抑えることは難しいです。
インプラントの耐久年数
Prosthetic treatment planning on the basis of scientific evidence
B.E.Pjetursson N.P Lang. Journal of Oral Rehabilitation Volume 35, Issue Supplement s1, pages 72 79, January 2008
この学術記事では、欠損歯に対する各治療方法の5年後・10年後の残存率を比較しています。
5年後の残存率 | 10年後の残存率 | |
---|---|---|
天然歯2本の従来の固定ブリッジ | 93・8% | 89・2% |
天然歯1本の従来の固定ブリッジ | 91・4% | 80・3% |
インプラント1本の固定ブリッジ | 95・2% | 86・7% |
インプラント複数の固定ブリッジ | 95・5% | 77・8% |
インプラントを使ったシングルクラウン | 94・5% | 89・4% |
※ブリッジとは・・・抜けてしまった歯を補うために、その両端の歯を削り、橋を架けるように入れ歯を作成する治療です。
※クラウンとは・・・クラウンは王冠・被る物という意味です。この場合は、一般的なデンタルインプラント治療の事を指しています。
さて、この記事からは、5年後では残存率にあまり差はありませんが、10年後になるとその差がはっきりしてきています。天然歯2本を使用した方が長持ちし、またインプラントを使用したブリッジでは、インプラントの少ない方が長持ちのようです。
また僅かな差ではありますが、インプラントを使ったシングルクラウンの残存率が良いようです。
インプラント治療の合併症発生頻度
A systematic review of the 5-year survival and complication rates of implant-supported single crowns
Ronald E. Jung Niklaus P .Lang , Clinical Oral Implants Research Volume 19, Issue 2, pages 119 130, February 2008
こちらの文献では、26の文献(3601件の症例)から5年間に生じたインプラントに関する合併症をまとめています。
インプラントの状態 | 発生率 |
---|---|
正常に機能しているインプラント | 95.5 – 97.6% |
インプラント体の破損 | 0.14% |
インプラント周囲炎 | 9.7% |
インプラントから2ミリメートル以上の骨吸収 | 6.3% |
上部構造体を止めているネジの緩み | 12.7% |
上部構造体を止めているネジの破損 | 0.35% |
上部構造体の破損 | 4.5% |
※骨吸収とは・・骨が痩せてしまう状態です。インプラント体周囲の骨吸収が起こると、固定が不安定になってしまいます。
インプラント体の破損は、骨に埋め込んだ部分の破損です。これは、インプラント体を撤去しなければならず、患者さんにとっては深刻な合併症となります。
これらの合併症は、定期的な検診・通院で調整・予防することが可能です。また手術したインプラントの本数が増えれば、その分合併症の発生も多くなり、使用年数が長くなれば合併症の発生率は高くなってくるでしょう。
インプラント周囲炎の原因・リスクファクター
Peri-implant diseases: diagnosis and risk indicators
Lisa J.A.Heitz-Mayfield , Journal of Clinical Periodontology Volume 35, Issue Supplement s8, pages 292 304, September 2008
この学術記事では、インプラント周囲炎のハイリスク群(主たる原因)についてまとめられています。
- 口腔内の衛生状態
- 喫煙
- 歯周病
- 糖尿病
- 遺伝子の特徴
- 飲酒習慣
- インプラントの表面
以上の項目が、インプラント周囲炎の主たる原因になるとのことです。
この中でも特に頻度が高いのが、口腔内の衛生状態・喫煙・歯周病です。
口腔内の衛生状態と歯周病は定期的な通院・検診で治療・予防することは可能ですが、喫煙に関しては本人の禁煙の意思に頼ることとなります。
インプラントを使った取り外し可能な部分義歯の15年の追跡調査
Implant Tooth-Supported Removable Partial Denture with at Least 15-Year Long-Term Follow-Up
Eitan Mijiritsky DMD Clinical instructor, Adi Lorean DMD senior surgeon, Ziv Mazor DMD private practitioner andLiran Levin DMD head of research
Clinical Implant Dentistry and Related Research
この学術記事では、20名を最初の2年間は6ヶ月毎にフォローアップを行い、その後毎年、少なくとも15年間追跡調査が行われました。
その結果、この追跡期間中は100%の残存率だったようです。また、合併症についても1例の破損を認めたものの、軽微であったとの報告です。
最後に患者さんの満足についても、よい咀嚼能力と安定性であったと報告されており、同時にこの治療に対する患者さんの理解も重要であると、まとめられています。