虫歯を放置するとどうなるか?

  1. 虫歯は進行性の病気です。
  2. 進行した虫歯の治療
  3. 最近注目の「歯原性菌血症」とは

1.虫歯は進行性の病気です。

 虫歯を治療せず、長期間治療せず放置するとどうなるでしょうか。

 虫歯は自然治癒しません。激痛のある時期がありますが、その時期を過ぎると痛みが引けてくるようです。
 ですが、治癒したのではなく「痛みを感じる神経が死んでしまい(腐ってしまい)、痛みを感じることができなくなった」ためです。

 虫歯は、下の画像のように、進行していきます。

C1 初期の虫歯です。明確な自覚症状は少ないですが、ここから虫歯治療の対象となります。
C2 冷たい物でしみるようになります。
C3 虫歯が神経まで達しており、炎症を起こします。常に痛みがあったり、歯ぐきが腫れたり、刺激により激痛が走る場合は、ここまで進行しています。根管治療が必要になり、治癒するまで非常に時間がかかります。(一ヶ月程度、場合によっては数ヶ月~数年を要する)
C4 ここまで進行した場合は、治療は不可能で抜歯するしかありません。また骨の中に膿がたまっていることがあり、これが原因で様々な全身疾患を起こしかねません。

 虫歯は、進行性の病気です。一度発症すると、自然治癒することはありません。また、一度失った歯は、再生しません。
 人生の楽しみのひとつでもある、「食の楽しみ・自分の歯で食べる楽しみ」を失ってしまう事になりかねないため、歯科の定期健診や早期の虫歯治療は重要です。


2.進行した虫歯の治療

 上記の画像で「C3」まで進行した虫歯の場合は、「根管治療」が必要になります。
 一般的には「根っこの治療」と呼ばれる場合が多いでしょうか。また「根幹治療」は誤字で「根管治療」が正しいです。

 さて、この「根管治療」とは・・

 虫歯が進行し、歯の奥にある神経にまで達してしまうと、口の中の細菌により神経が細菌感染により炎症を起こし「歯髄炎」を起こします。
 細菌感染を起こした部分を機械的の除去し、再発しないよう薬剤を充填し、被せ物をします

  1. 虫歯部分を削り、炎症を起こしてしまった神経を除去します。
  2. 再発した場合も、同じように感染源を除去します。
  3. 感染源・炎症を起こした神経を、細い道具を用いて除去します。
  4. 除去した部分へ、再び薬剤を充填します。
  5. ちゃんと咬めるように、被せ物を調整します。

3.最近注目の「歯原性菌血症」とは

 その前に「菌血症」とは、傷口から血中へ細菌が入り込み、血流に乗って全身へ運ばれる(運ばれている)ことを指します。似たような意味で「敗血症」がありますが、これは細菌感染症が全身に広がった状態で、非常に重篤な感染症です。

 「菌血症」は「細菌が血液中へ侵入しただけの状態」であり、健康な方であればそれが原因で重篤な細菌感染症を心配する必要はありません。この「菌血症」になる機会は多いようです。転んで怪我をした、食中毒・下痢・便秘になった、あるいは、出血を伴う医療行為を受けられた場合など・・・

 多いと言っても、しょっちゅう怪我をしたり下痢をしたり、手術をしたりするわけでは無いので、この程度で「機会が多い」とは言いにくいです。

 では、発生頻度の高い菌血症とはなんでしょうか。

 それは「歯原性菌血症」です。特に虫歯や歯周病がある、口腔内衛生状態の良くない場合においては、ハミガキだけでなく食べ物を食べるだけで、菌血症を起こします。

 菌血症になると、脳脊髄液・関節滑液・精液・尿など、体液のほぼ全てに菌体・菌体成分が進入しますが、人間の身体には強固な免疫機能があるため、例え菌血症を起こしたとしても、何事もなかったかのように異物は排除されます。

 しかし体調を崩していたり、加齢などにより体力が衰えてくると、これを追い返すことができずに、重篤な疾患を起こす恐れがあります。虫歯・歯周病があり内臓を悪くした、なんて話しをどこかで聞いたことはないでしょうか?

 また最近の研究では、ある種の動脈硬化の原因のひとつにこの「歯原性菌血症」が指摘されています。

 そして動脈硬化は、脳梗塞や心筋梗塞の原因のひとつです。

 虫歯・歯周病を予防・治療することは、間接的に脳梗塞・心筋梗塞を予防することになります。