~失神(一過性の意識消失)は生死に直結する重大な前兆です。~
失神は一過性の意識消失のみを表す病態ですが、突然死や脳卒中、心不全など、生死に直結する重大な病気の前兆である場合があります。しかし、医療従事者を含め日本人は欧米に比べて失神に対する危機感が希薄なのが現状です。
その理由として、失神から意識が回復した後に異常所見や症状が全くない場合が多く、医療従事者が失神に対する重要性を認識しにくいことが挙げられますが、世界的に見ると、失神は先進国でも最も医療費を費やしている疾患の一つとされています。
近年、日本国内でも徐々に「失神センター」を開設する医療機関が増えており、輝城会グループでも診療体制の整った沼田脳神経外科循環器科病院に、このたび失神センターを開設する運びとなりました。
失神や意識障害を発症し、救急車等で医療機関に到着した時はすでに意識が正常に回復していることがあります。この場合、過去に心臓疾患の症状(胸痛、動悸、心臓や大血管の疾患など)や脳血管疾患の症状(頭痛、めまい、吐き気、手足の麻痺、知覚症状、失語症や構音障害など)がなく、また、安静時心電図、胸部レントゲン撮影、全身CT、脳MRI等の検査で意識が無くなるような所見も認められない場合は、迷走神経性失神や起立性低血圧と診断されることがたびたびあります。
迷走神経性失神や起立性低血圧は、失神の原因を徹底的に究明しても判明できない場合の診断であり、初診時の検査のみで安易に判断することは危険です。突然死や失神の再発、脳卒中・心不全などの発症を防ぐために、失神に対する精密検査を入院(数回または一~二週間)して行い、原因を究明することが必要です。
失神に隠れている突然死の原因として、
1.突発性致死性不整脈(心原性失神)
2.てんかんや脳幹(脳の生命中枢)の虚血による意識消失発作(脳疾患性失神)
3.反射性(血管迷走神経性)失神等
がありますが、これらに関する専門の検査が必要であり、場合によっては早期の治療が望まれます。
なお、失神に対する精密検査としては次の検査があります。
失神外来で前記各種検査を順次行うことにより、失神の原因の確定診断と突然死や脳卒中、心不全の適切な再発予防治療が可能となります(検査によっては一泊二日の入院を1~3回することが必要です)。ただし、検査の進行状況などにより原因の特定までに半年以上かかること場合もあります。
前述のとおり、失神は生死に直結する重大な前兆であることを理解していただき、一度でも失神の経験のある方は、原因を究明するために失神外来の受診及び検査を受けていただくことを強く推奨します。
失神外来
- 沼田脳神経外科循環器科病院 月曜日午前(月2回)
- 沼田クリニック 火曜日・金曜日午前
- 吾妻脳神経外科循環器科 水曜日午前
※心因性発作、低血糖、電解質異常、貧血、低酸素血症による意識障害は初診時に診断することができるため今回は省略しています。